バイオマトリックス研究所の沿革
ニッピは創業以来、分析室を有していましたが、軍用皮革鞣し(なめし)の研究に際して補助金を得て、1921年(大正10年)に研究棟が建設され、ニッピ
研究所として独立しました。その後、商工大臣の認可を受けて、1938年(昭和13年)財団法人日本皮革研究所が併設され、皮革の製造に関する研究、皮革
製品の分析、ゼラチンの研究などを行ってきました。
1962年(昭和37年)に研究棟が新築され、ニッピ研究所は次々に新しいテーマに取り組みました。皮・骨の主要タンパク質であるコラーゲンに関する研究は、昭和30年代に始まりました。
それまで不溶性と考えられていたコラーゲンの可溶化に、1960年(昭和35年)に世界に先駆けて成功し、トリプシン・ペプシンによる可溶化法で1963年(昭和38年)に特許を取得しました。
その後も、プロクターゼ(1963年<昭和38年>)やアルカリ(1969年<昭和44年>)によるコラーゲンの可溶化法を次々
に開発しました。これらの発見は、それ以後の細胞外マトリックスの基礎研究に非常に重要であるばかりでなく、ソーセージケーシングやコラーゲン化粧品な
ど、ニッピを支える商品の開発に直接結びついています。
また皮革の鞣し(なめし)、写真用ゼラチンの性能向上、ポリ塩化ビニルなどの合成高分子、コラーゲンの基礎および医療への応用、細菌からのコラーゲン分解
酵素の分離とその利用など、皮革を中心とした幅広い研究が行われました。
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▲コラーゲンに接着した
皮膚表皮細胞
(インテグリンを蛍光染色) |
▲肝臓組織中の
コラーゲンの分布
(蛍光染色) |
▲コラーゲン線維中のコラーゲン分子配列
(模式図) |
▲コラーゲン線維電子顕微鏡写真
(6万倍) |
研究所の改組と改称
細胞外マトリックス分野の急速な発展に対応して基礎および
応用研究を進めるために、1993年研究所は改組され、バイオマトリックス研究所として生まれ変わりました。バイオマトリックス研究所ではコラーゲンを中
心とした細胞外マトリックスの研究を精力的に行い、学術論文や特許を次々に生みだす一方、高付加価値のマトリックス関連製品の開発にも取り組んでいます。
バイオマトリックス研究所の移転
これまでの設備が手狭になり、老朽化も目立ってきたた
め、2006年9月にバイオマトリックス研究所は東京都足立区のニッピ本社の構内から、茨城県取手市に主な機能を移転しました。機能的なレイアウトの研究
施設を設計し、質量分析機をはじめとした新しい研究機器類の導入を行い、よりいっそう研究に打ち込める態勢を整えました。
バイオマトリックス研究所の理念と活動
バイオマトリックス研究所の研究対象は、すべての生物に存在する細胞内外のマトリックス(基質)です。特に、コラーゲンを中心とした細胞外マトリックスの生化学・細胞生物学・生体工学的な研究を行っています。
研究はプロジェクト制を採って進められており、この分野の
急激な発展に柔軟に対応しつつ取り組んでいます。常時4~5のマトリックス関連テーマの基礎研究のプロジェクトが進行する一方で、研究成果を製品に結びつ
ける応用研究プロジェクトが必要に応じて組織されています。基礎研究と応用研究を有機的に結びつけ、新しいバイオマトリックスの可能性を発見し、実用化す
ることを常に目指しています。
研究所 玄関ロビー |
バイオマトリックス研究所全景 |
研究室 |
移転前の研究所(東京都足立区) |