コラーゲンの種類と役割
ヒトの体内には28種類の型に分類されているコラーゲンが存在し、それぞれが特異的な生理機能を持ちます。例えば、最も豊富に存在するI型コラーゲンは、皮膚や骨などで線維構造を形成し、細胞の足場、力学的強度の維持などの役割を担っています。
コラーゲンの特性
コラーゲンは三本のポリペプチド鎖が、三重らせん構造を形成しているタンパク質で、熱により不可逆的に変性してゼラチンになります。コラーゲンは酸性溶液中で溶解しますが、中性には溶けにくい性質があります。
コラーゲンのゲル化
I型コラーゲンなどの線維性コラーゲンは、生理的濃度の塩を含む中性溶液中の場合、低温であれば溶けていられますが、加温されると分子同士が会合し、線維構造を形成され、水分を保持したゲルを形成します。
コラーゲン溶液の保存方法
研究試薬用コラーゲン(液状)は冷凍状態で出荷しています。コラーゲン溶液は冷凍状態で長期間安定です。ご使用の際は冷蔵庫にて解凍してください。解凍後は凍結融解をなるべく避け、冷蔵にて保管してください。
コラーゲン粉末の溶解方法
コラーゲンは酸性溶液中で溶解します。細胞培養に用いる場合、酸が強すぎると中和が難しいため、5 mM 酢酸または1 mM 塩酸で溶解することをお勧めします。また、本品は無菌では無いため、細胞培養に使用する際は0.45 μm のフィルターで濾過してから使用してください。コラーゲンの濃度は任意に選べますが、5 mg/ml より高濃度にすると粘度が高くなり、操作が難しくなります。高濃度を調製する際は先に水溶液に分散させてから酸性に調製すると均一に溶解しやすくなります。
コラーゲン粉末の溶解後の保存方法
溶解後は研究試薬用コラーゲン(液状)と同様、凍結融解をなるべく避け、冷蔵にて保管してください。
抽出方法の違いによるコラーゲン試薬の特性の差異
生体組織中のコラーゲンは、分子間で架橋を形成し、大部分が不溶化していますが、酸性溶媒でわずかに溶け出します。酸抽出コラーゲン(ASC)は、このわずかに溶けたコラーゲンを精製したもので、生体内に近い構造を保持しています。一方、ペプシン可溶化コラーゲン(PSC)は、ペプシンで架橋を形成している部位(テロペプチド領域)を切断して溶かしたコラーゲンを精製したものです。そのため、ASCとPSCではテロペプチド領域の有無に違いがあり、生理的条件下で作るゲルの性質も異なります。I型コラーゲンの場合、ASCはPSCに比べて透明度が高く、強度の高いゲルを作れます。
由来原料の違いによるコラーゲン試薬の特性の差異
同じコラーゲンでも、動物種によって特性が異なり、例えばウシ真皮由来のI型コラーゲンは、ブタ真皮由来のものよりも強度の高いゲルを形成します。
コラーゲンゲルの作り方
コラーゲンゲルは、低温条件下、生理的濃度の塩を含む中性溶液に溶解した後、静置した状態で加温(37℃程度)することで作製できます。コラーゲン濃度が高いほどゲルの強度が増しますが、その分ゲル化する時間が短くなるため操作が難しくなります。詳細なプロトコルは、こちらをご参照ください。
コラーゲンゲル培養後に細胞を回収・継代したい
「ブライターゼ-C」を用いた細胞の回収と継代方法については、こちらをご参照ください。
コラーゲン粉末の粒子サイズ
粉末コラーゲンの粒子サイズは1 mm以下であり、特定のサイズコントロールは行っていません。
低エンドトキシンゼラチンの抽出方法と分子量の差異
「HMG-BP」はアルカリ処理を行ったゼラチンで、平均分子量(Mw)は60,000~300,000になります。「AP」は酸処理ゼラチンを原料に加水分解したゼラチンで、平均分子量(Mw)は約8,000で、ゲル化はしません。
低エンドトキシンゼラチンのゼリー強度
「HMG-BP」のゼリー強度は250 g以上であり、「AP」はゲル化しない製品です。
ゼラチンの生体内残存時間
架橋していないゼラチンは生体内では速やかに分解されますが、架橋処理を行う事により、1週間以上の残存が可能です。ただし、1ヵ月以上の残存は難しいです。
HMG-BPの特性
「HMG-BP」はアルカリ処理により、アミノ酸側鎖のアミドが脱アミド化され、等電点が9前後から5前後までシフトします。そのため、塩基性物質と静電気的な結合を行う事ができ、生体内ではゼラチンの分解と共に塩基性物質を徐放する事が可能です。
低エンドトキシンゼラチンの形状を加工する事は可能か?
当社では、低エンドトキシンゼラチンをスポンジ状やパウダー状など、さまざまな形状に加工することが可能です。詳細はお問い合わせください。
低エンドトキシンゼラチンを一括購入する事は可能か?
バルク品の提供が可能ですので、一括購入についてはお問い合わせください。