ニッピリンカー®
ニッピ独自の技術を用いた化学架橋法により架橋した、ポリ塩化ビニル樹脂です。 とくに耐熱性や耐溶剤性に優れ、主に電線被覆材やマスキングフィルム基材などに使用されています。
1. 化学架橋のメカニズムとリンカーの由来
塩ビの化学架橋といえば「ニッピリンカー」 ~塩ビの化学架橋のパイオニア~
"架橋"とは、分子同士を照射や化学的方法などで結びつけることです。
ニッピでは、架橋剤を用いて、塩ビを化学的方法で架橋させる「ニッピリンカー」の技術開発に成功しました(参照:塩ビの化学架橋のイメージ図)。ちなみに、架橋は英語でが“cross link”を意味し、リンカー“linker”の名前の由来となっています。
塩ビの化学架橋のイメージ図
2. ニッピリンカー®の特徴
「ニッピリンカー」は、樹脂にあらかじめ架橋剤が配合されているため、成型後、一定時間過熱すると樹脂が架橋し、耐熱性などの物性が著しく向上します。成型については、温度条件などに注意が必要ですが、通常の軟質塩ビと同様に押出し成型できます。架橋作業はとても簡単で、成型品を加熱炉に入れ、所定の温度と時間で加熱処理するだけです。大掛かりな設備を必要とする照射架橋に比べて、製造コストを大幅に抑えることができます。
(1) 耐熱性の向上
一般製品と比較して、樹脂の耐熱温度が向上するのが最大の特徴です。「ニッピリンカー」の架橋では、高温時での樹脂の形状変化率が少なく、熱寸法安定性や圧縮永久歪が改善されます。
高温耐熱試験 試験条件:170℃×60min
(2) 収縮率の向上
"架橋"によって一般のフィルムよりも高温収縮率が改善し、また高温時の物性維持率が飛躍的に向上します。
一般PVCとの熱収縮率の違い
フィルムの高温領域高温領域物性 (120℃領域)
(3) 難燃性の向上
「ニッピリンカー」は熱によって架橋反応が促進されるため、樹脂が燃焼すると、耐ドリップ性能(ドローダウン防止性能)が向上します。樹脂の溶融が無くなることから、難燃規格や防炎規格などの取得が有利となります。
(4) 耐溶剤・薬品性の向上
「ニッピリンカー」では、塩ビ分子が架橋することでゲル分率(溶剤への不溶成分割合)が増加し、酸やアルカリへの耐性が向上します。各種有機溶剤などに強くなることも、「ニッピリンカー」の特徴です。